今回は、より具体的な「高齢者の一人暮らしに係わる問題」についてお伝えすると共に、その対応策の例をご紹介していきます。
■高齢者の一人暮らしの現状
・室内外でのけが、転倒
・服薬管理ができない
・認知症によって引き起こされるトラブル
・食生活の偏りや低栄養
■高齢者の一人暮らしの対応策
・見守りサービスや見守り機器(システム)の活用
・服薬管理ロボット
・介護サービスの利用
・地域包括支援センターを利用
・成年後見人制度の利用
■まとめ
高齢者の一人暮らしの現状
高齢者の一人暮らしは精神的な孤立感や身体的な不自由など、さまざまな問題が考えられます。それが要因となり起こりえるリスクなどをいくつかご紹介します。
室内外でのけが、転倒
高齢者のけがや転倒は、大きな事故になる可能性があります。2016年に行われた厚生労働省「国民生活基礎調査」では、要介護・支援者になる要因として「骨折・転倒」が4位(12.5%)と、上位に位置しています。
このように、けがや転倒で寝たきり状態になる高齢者は少なくありません。また、転倒によって自信を喪失したり、歩く・走るといった動作に恐怖心を持ったりすれば、筋力の衰えや身体機能低下につながるおそれもあります。
服薬管理ができない
高齢者は複数の疾患に対する治療を受けているケースが多く、その分だけ薬の種類・量が多くなる傾向にあります。服薬管理が複雑になることに加え、視覚障害や認知症などで、薬の飲み忘れ・飲み間違いをしてしまう可能性も考えられます。
ご家族や介護サービスの助けがあれば服薬管理も楽になりますが、一人暮らしの場合には上記のような状況が増えるおそれも。また、手指動作が不自由となり、そもそも包装された薬を取り出せないなどの事態も考えられます。
認知症によって引き起こされるトラブル
国内における65歳以上の高齢者の認知症患者数は、2012年の時点で462万人とされています。これは65歳以上の高齢者の7人に1人が認知症であることを示す数字です。2015年における65歳以上の一人暮らしの割合は34.4%ですから、約159万人の高齢者が認知症にかかりながら一人暮らしを送っている計算にもなります。
判断能力が低下すると、適切な介護サービスが受けられなかったり、トラブルに巻き込まれてしまったりする心配もあります。また、同居人がいないことで事態の深刻さに気づけず、症状の進行を抑えられないといった点も問題です。
食生活の偏りや低栄養
一人暮らしの高齢者にとって、食事はさみしさや孤独を感じるきっかけになりがちです。そのため、栄養などを考えた献立に無頓着となるなど、食に対する意識の低下が考えられます。その結果、偏った食生活を送ってしまう可能性があります。
また、住居の近くにスーパーなどがなかったり、足腰が悪く買い物が困難だったりすれば、低栄養に陥るおそれもあります。そのほか、高齢だからといって肉や魚を控えよう、摂取しなくてもよい、といった勘違いも低栄養につながる要因のひとつです。
高齢者の一人暮らしの対応策
前項のとおり、高齢者の一人暮らしは健康上の問題や、社会的問題が少なくありません。この状況の対応策の例を以下にご紹介します。
見守りサービスや見守り機器(システム)の活用
高齢者が一人暮らしをする家にカメラやセンサー、緊急ボタンなどを設置するサービスです。高齢者の普段の生活ぶりを見守れるほか、トラブルが発生した際には通知のほか、スタッフの駆けつけといったサービスが受けられます。
服薬管理ロボット
高齢者向けの服薬管理を目的としたロボットも登場しています。事前に設定をすることで、正しい種類・量の薬を取り出してくれたり、服薬のタイミングをお知らせしてくれたりします。なかには、離れて暮らす家族へ服薬の通知を送ってくれる機能を持つものも。正しい用法・用量が徹底されることで、服薬環境の改善に役立ちます。
介護サービスの利用
高齢者のサポートはご家族による同居が望ましいのですが、事情によりそれが叶わないことも少なくありません。この際は、訪問介護などの介護サービスの利用も検討しましょう。生活のお手伝いをしてもらえるのはもちろん、人とのコミュニケーションを取る機会にもなります。
地域包括支援センターを利用
地域包括支援センターでは、その地域に住む高齢者に向けた介護サービスの導入、健康増進支援を行う公的な相談所です。ケアマネージャーや社会福祉士、保健師による、専門的なサポートが受けられます。医療や行政と連携した適切な対応を行ってもらえるため、ご家族の方はぜひ活用しましょう。
成年後見人制度の利用
成年後見制度とは、家庭裁判所へ申請し選定された成年後見人が、本人に代わって金銭の管理や介護サービスの契約を行えるようになる制度です。認知症などによって不利益な契約を結んでしまうなどのトラブルに巻き込まれた場合も、後から取り消しが行えます。
まとめ
高齢者の一人暮らしの現状は、決して楽観できるものではありません。想定されるリスクを把握し、対応策を講じることが必要です。今後さらに社会の高齢化は進み、一人暮らしの高齢者も増加すると見られています。ご家族はもちろん、社会全体で高齢者を支えていく環境づくりが求められます。