「子育て安心プラン」の概要
国は待機児童解消のための取り組みとして、平成29年11月「子育て安心プラン」を前倒しで進めることを表明しました。「子育て安心プラン」の概要としては以下のようになっています。
①待機児童を解消
東京都をはじめ意欲的な自治体支援のために待機児童解消に必要な受け皿として、約22万人分の予算を平成30年度から平成31年度末までの2年間で確保することを目標としています。遅くとも平成32年度末までの3年間で全国の待機児童を解消させるとしています。
②待機児童ゼロを維持しつつ、5年間で「M字カーブ」を解消
「M字カーブ」解消のために、平成30年度から平成34年度末までの5年間で女性就業率80%を目指します。そのために約32万人分の受け皿を整備するとしています。
M字カーブとは就業率のグラフの形状がM字型となる現象のことであり、女性が出産などで一時的に仕事を離れ、子どもの成長後に再就職をする人が多いことが主な理由です。
そして「子育て安心プラン」の軸となる6つの支援パッケージが発表されました。
①保育の受け皿の拡大
- 都市部の高騰した保育園の貸借料補助
- 大規模マンションでの保育園設置推進
- 固定資産税減免の普及
- 幼稚園での2歳児受入れ・預かり保育推進
- 企業主導型保育事業の地域枠拡充
- 国有地、都市公園、郵便局、学校等余裕教室の活用
- 民間企業の遊休施設等の活用
- 家庭的保育の地域コンソーシアムの普及、小規模保育、病児保育等多様な保育の受け皿確保
②保育の受け皿拡大を支える「保育人材確保」
- 処遇改善を踏まえたキャリアアップの仕組み構築
- 保育士の子どもの預かり支援推進
- 保育士の業務負担軽減支援
③保護者への「寄り添う支援」の普及促進
- 「保育コンシェルジュ」による保護者のための出張相談の支援拡大
- 妊娠中からの保育園等への入園申込みの明確化
④保育の受け皿拡大と車の両輪の「保育の質の確保」
- 認可以外保育施設の認可保育園等への移行促進
- 認可外保育施設での事故報告と情報公表推進
- 保育園等の事項防止の取組強化
⑤持続可能な保育制度の確立
- 保育実施に必要な安定財源確保
⑥保育と連携した「働き方改革」
- 保育園に入れない場合の育児休業期間の延長
- 男性の育児促進
- 育児休業制度の在り方を総合的に検討
予算概算要求の概要
待機児童解消に向けた「子育て安心プラン」をはじめとした総合的な子育て支援について、平成30年度の厚生労働省の予算概算要求額は1,397億円 です。この数字は平成29年度当初予算額が975億円だったのに対して、明らかな増額となりました。待機児童解消に向けて、国がさらに力を入れていることがお分かりいただけるかと思います。
待機児童解消のためには、保育所等の受皿拡大と人材の確保だけでなく、
- 子どもを産み育てやすい環境づくり
- ひとり親家庭等の自立支援推進
- 多様な女性活躍推進
をはじめとした、様々な環境づくりが必要であることを考慮せねばなりません。これらにも概算要求がなされています。
国が待機児童解消に向けて「子育て安心プラン」を政策として掲げることで、現実的に待機児童が解消されるのかはまだ分かりませんが、このような積極的な取り組みを行う政府の対応は評価するべきでしょう。子育て世代には大変注目を集める「子育て安心プラン」ですが、その行く末をしっかりと見守っていくことがわたしたち国民の義務であると感じます。
待機児童対策の今
厚生労働省の2018年9月の公表では、同年4月1日時点の待機児童数は4年ぶりに減少し1万9895人となりました。2万人を割り込むのは2008年依頼10年ぶりで、今年は首都圏を始めとした都市部を中心に11万人以上の受け皿が整備されました。
安倍首相は2020年までに待機児童ゼロを掲げていますが、働く女性の急増や今まで入所をあきらめていた潜在的な待機児童が表面化することで更なる保育園整備が求められている状況です。
また2019年の10月からは幼稚園、保育所、認定こども園等の利用料が無償化されます。これにより保育園等に子供を預け、就労したいと望む女性は更に増える可能性が非常に高いです。また保育園の運営側からは保育士の確保が困難であるという声がよく聞かれます。待機児童対策として、施設などハード面の整備は勿論必要ですが、保育士にとって長く働ける環境整備、賃金体系の見直し等、根本的かつ包括的な対応が求められます。