これからはじまる!地域共生社会とは

2018.02.19

更新日:2021.12.15

地域共生社会が求められる背景

日本には「困ったときにはお互い様」という考え方が根付いており、冠婚葬祭や年中行事にいたるまで、ご近所同士で助け合ってきた歴史があります。

時代が進む中、この助け合いの一部は社会保障制度が担うこととなり、高齢者、障害者、児童などの対象者ごとに、整備が図られてきました。

しかし、高齢化や人口減少、核家族化や基礎的な生活レベルの向上を受けて人間関係が薄れてきています。かつての助け合いやつながりを再構築することで、だれもが役割をもち、認め合い、支えあうことで、その人らしい生活を送ることができるような社会が求められてきています。
また、人口減少は経済活動の縮小を招き、様々な課題が顕在化しています。さらに、対象者ごとに整備されてきた社会保障制度も単体では解決できない課題が見受けられるようになりました。

「地域共生社会」とは、このような社会や生活の変化をふまえ制度や分野を問わず、地域住民や関係団体などが主体となって、新たな地域のつながりをつくっていこうとするものです。

地域共生社会の具体的内容

具体的な内容は「地域課題の解決力」「地域丸ごとのつながり」「地域を基盤とする包括的支援」「専門人材の活用」と4つの視点に分かれます。

まず地域課題の解決力です。世代を超えたつながりを促すことで相互扶助のあり方を実現、生き甲斐を創出する取り組みとされます。生活が困難になる事象が生じたときでも周囲から孤立することなく、活き活きと暮らしていける社会を実現するねらいです。

地域丸ごとのつながりとは、民間資金や失業状態にある人材の労働力を活用して、社会的課題を解決しようとする取り組みです。環境保全活動や商店街の空き店舗活用など社会的な問題を通して、お金と人が循環する仕組みを産み出していく目的があります。

地域を基盤とする包括的支援とは、支援を必要とする層が自立した生活を実現できるように、町ぐるみで支えていこうとするあり方です。

専門人材の活用とは、保健医療福祉の各分野の専門家を養成し、相互に連携しながら地域社会に貢献していくあり方が望まれます。

共生型サービスとは

介護保険と障害害福祉が縦割りになった制度では、障害を抱えた人が65歳を迎えて介護保険対象者となったとき、使い慣れたサービス事業所を利用することはできなくなる問題がありました。

そこで、使い慣れた事業所においてサービスを利用しやすくするためや、福祉に携わる人材を地域の実情に合わせて活用するために提唱された概念を「共生型サービス」といいます。介護保険または障害福祉のいずれかの指定を受けている事業所が、もう一方の制度における指定を受けやすくなります。具体的にはホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイについて高齢者や障害児・障害者が共にサービスを受けられるようになります。

これまでも幅広い利用者を募る共生型施設はあったものの、介護保険・障害害福祉の両方の指定を受ける必要がありました。異なる設備基準をどちらも満たす取り組みは簡単なこととはいえず、普及の妨げになってきた背景があります。共生型サービスという新しい概念を打ち出すことによって、いずれかの指定を受けている事業所が他方の機能も備える流れを想定、普及を促す方針です。各事業所は地域の実態をふまえたうえで、共生型サービスとしてのあり方を目指すかどうか判断するものとされています。

共生型サービスは、人口減少地域における福祉人材不足を解消する手だてとしても注目されるあり方です。専門人材を育成する取り組みが始まっても、すぐに人材不足を解決できるわけではありません。1つの事務所が介護・障害害福祉と2つの機能を担うことによって人材を有効活用できるようになり、より地域の実情に合った機能的な施設として利用される状態が理想とされます。

地域共生社会に向けた取り組みが活発化している時代において、社会に貢献できる施設として認識されるためには、利用者の声に改めて耳を傾けて、立ち位置を明確にする取り組みが必要でしょう。今後の改革の方向性に関心を持ち、未来をつくる施設として機能するための対策が求められます。

地域共生社会の実現に向けて

ここからは、地域共生社会を実現するためにどのような取り組みが行われているのか具体的にふれていきます。

・福祉サービス提供のガイドライン制定

2017年には、全国社会福祉協議会において地域社会福祉計画のガイドラインが制定されました。これは、地域づくりまで含めたうえで、官民一体となって行う地域改革のことです。例えば、住民による支えあいの強化を公的機関が支援する・支援するにあたって地方自治体の責務を定めるといった内容が含まれています。

また、実際に自治体単位で既に取り組んでいる地域もあるものの、モデルケースを参考にできないため、独自で体制を整えていく動きがポイントとなっています。

・地域のつながり強化

これまでの福祉サービスはあくまで、提供者と利用者に分かれていました。しかし、地域共生社会においては、だれもがサービスの提供者になることが可能です。そこに住む住民と地方自治体の間でルールを策定し、実行していく点などは今までの福祉サービスのあり方を変える可能性を持っているといえるでしょう。

ある市町村では、住民参加型で地域の課題を探し、解決していく体制を整えているなど全国的に地域のつながりは強化されつつある状況です。

・重層的支援体制整備事業

相談・参加・地域づくりに対する総合的な支援を行う事業です。例えば、相談者が生活困窮で相談を行った場合、それぞれの分野につなぐ・支援するといった動きが可能となります。従来までの行政システムと比較しても、対応が早く、場合によっては住まいの提供なども一カ所に相談することで可能となる点はメリットといえるでしょう。
また、社会的な孤立を防ぐといった支援もワンストップで対応可能となるため、サービスの提供者も負担を軽減できます。

・専門人材の強化・活用

これまでも医療・福祉分野では、専門人材が必要とされてきました。そのうえで、今後は行政としても専門資格を持つ人々を育成する取り組みを活発化していく予定です。例えば、ある市町村では生活支援コーディネーターの研修を行っています。
 一方的にサービスを提供するのではなく、相談を重ねながら実践を繰り返していくことで専門人材を孤立させない体制を構築しています。専門人材がこれまで以上に幅広い分野で活躍できるようになるでしょう。

まとめ

地域共生社会は、官民一体となって取り組む地域社会の改革です。福祉サービスだけでなく、地域の活性化や相互協力の体制など今までのサービスのあり方を変えていく可能性を持っています。4つの指針なども今後さらに強化されていく可能性があります。

全ての地方自治体が対応できているわけではないものの、今後の社会課題を解決していくためには必要な改革の1つだといえるでしょう。

 

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