地域医療構想の概要
■地域医療構想とは
1.2025年の医療需要と、病床必要量の4つの医療機能(※)ごとの推計
2.目指すべき医療提供体制を実現するための施策厚生労働省は2015年3月に「地域医療構想策定ガイドライン」を作成。
2016年度中に各都道府県は「地域医療構想策定ガイドライン」に沿って、医療機関より報告を受けた「医療機能の現状と今後の方向」に基づいて、地域医療構想を策定しました。
(※4つの医療機能=「高度急性期、急性期、回復期、慢性期」の各病床を指します)
■地域医療構想が必要な社会背景
地域医療構想が求められる背景としては、いわゆる「2025年問題」が大きく関係しています。 2025年問題とは、団塊世代が75歳を迎える年を指し、それに伴って医療業界には以下のような影響があると考えられています。
・病院数の減少や医師(労働力)の不足
・後期高齢者の増加に伴う医療・介護ニーズの高まり
・医療費の増加と(若い労働力不足に伴う)社会保障費の負担増加
このような背景により、地域医療構想では「高齢者人口の増加の地域差」を意識しつつ「患者さんの状態に最適な病床での、良質な医療サービスの提供」を目指します。2025年問題を見越した上で、限られた資源のより効果的・効率的な配置が求められているのです。
病床再編について
病床再編とは、2025年問題を見越して医療提供体制の見直しを図る政策で、2012年に閣議決定されました。「地域医療構想」では病床必要量の4つの医療機能ごとの推計が求められましたが、病床再編では具体的な「医療の機能分化の形」が示されています。
■病床再編とは
■病床の現状と目標
2014年の病床数と2025年の必要病床数の目標は以下の通りです。
【2014年の病床数(トータル:123.4万床 ※未報告・未集計あり)】
高度急性期:19.1万床
急性期:58.1万床
回復期:11.0万床
慢性期:35.2万床
【2025年の必要病床数の目標(トータル:115~119万床程度)】
高度急性期:13.0万床
急性期:40.1万床
回復期:37.5万床
慢性期:24.2~28.5万床
上の病床数を比較すると、急性期病床は必要量に対して過剰であり、回復期病床が不足していることがわかります。しかし、急性期病床から回復期病床への転換は2019年半ば時点でも思うように進んでおらず、高度急性期・急性期の病床数は、72万床までしか減らせない見通しとなっています。そのため「回復期病床の不足」という事態が予想されています。なお、回復期を終えた患者の行く先としては「慢性期病床」「有料老人ホーム」などが挙げられます。慢性期病床は現在よりも減少する方針ですので、回復期を終えた患者の行く先として有料老人ホームの必要性や需要が高まるとも考えられます。
病院の今後のあり方やゆくえ
病院の今後のあり方やゆくえは「2025年問題」が大きく左右していると言っても過言ではありません。中でも地域医療構想や病床再編の核ともいえる「病床機能の分化と連携」は、今後の病院のあり方を大きく示しているといえるでしょう。
今後、病院数や医師(労働力)が不足するのに対して、後期高齢者の医療・介護ニーズは高まると予想されていますが、その打開策の鍵となるのが「地域へのシフト」です。在宅医療の増加や、介護・福祉施設との連携など「地域包括ケアシステム」を意識し、地域で求められているニーズや機能を実践することが、今後さらに重要になるのではないでしょうか。加えてIT 化の推進による経営の最適化・効率化も、他業種に漏れず、医療界にとっても不可欠と予想されます。
まとめ
今回ご紹介した地域医療構想や病床再編は、2025年問題を見越したものです。すでにご紹介したとおり医療制度の見直しも始まり、今後医療業界の大幅な変革も予想されます。病院内部の見直しはもちろんのこと、地域などの外部にも積極的に目を向け、連携することが求められるでしょう。