農業×福祉で地域共生社会をつくる!農福連携とは

2020.03.25

農福連携は農業と福祉が協力することで、それぞれの分野が抱える課題を解決し、地域共生社会の実現につなげようという施策です。今回は地域共生社会の実現に向けた農福連携の概要や背景・企業側の取り組みなどをご紹介します。

農福連携の概要と近年の動き

日本の障害者雇用の状況は早期に改善するべき問題となっています。それを解消するために、人手不足で悩む農家と障害者施設が連携する「農福連携」という取り組みが推進されています。
2016年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」には、障害者が特性に応じて能力を最大限発揮できるよう、農福連携の推進が盛り込まれました。また「障害者基本計画」や「経済財政運営と改革の基本方針2018」でも農福連携の重要性は説かれており、政府が自ら推進している取り組みのひとつです。

農福連携が求められる背景

2010年に260万人以上だった農業就業人口は、2018年には175万人まで減少しました。一方、農業就業者の平均年齢は上昇しており、農業分野の高齢化による人手不足は深刻です。日本の農業にとって大きな課題といえるでしょう。
また高齢化によって農地を管理する人が減少し、荒廃農地も増加しています。荒廃農地の増加は農業生産基盤の縮小だけでなく、農業が受け継がれないことによる地域の衰えにもつながりかねません。

農福連携を政府が推進!新たな拠点が3,000カ所増加予定

農福連携を推し進めようにも、現状は農業を障害者の雇用の場として活かす仕組みが十分に整っているとはいえません。とくに、農福連携を通して障害者の雇用を促進したい福祉施設と、就業人口の減少を食い止めたい農家のマッチングがうまくできていない状況が続いていました。

そこで政府は、2024年度までに農福連携に取り組むための拠点を3,000カ所増やす基本方針を策定しました。施策には以下のようなメリットがあります。

  • 農福連携に参加したい障害者施設が農家と直接コンタクトを取れるようになる
  • 障害者に農業を指導するジョブコーチの育成ができる など

すでに取り組んでいる農家や福祉施設と連携することで、農福連携の波はさらに大きくなるでしょう。

農業分野、障害福祉分野にもたらされるメリット

上述のように政府も推進する農福連携ですが、実際にはどのようなメリットもたらすのでしょうか。農業と福祉、それぞれの視点から考えていきます

【農業・農村】労働力と地域の問題を解決

農業分野の課題は、「労働力の確保」と「荒廃農地の解消」の2点です。とくに労働力の確保は、若手農業者の半数近くが高い関心を示し、新規就農者の約3割が「経営面での課題だ」と回答する(※)など、迅速な対応が求められています。
農福連携が進むことで障害者が農業の担い手として活躍し、農業労働力の確保につながることが期待されています。また、農業就業者が増えることで荒廃農地の再生も可能になるでしょう。
さらに、農業を通じて地域で生活を営むことで、地域コミュニティの維持や活性化・地方創生にもつながり、農業だけでなく農村の発展にも寄与することも期待されます。

全国農業会議所「新規就農者の実態に関する調査結果」(平成28年)

【福祉(障害者等)】就労に関わる問題の解決

福祉分野の大きな課題は、「障害者の就労先の確保」です。全国人口の約7.4%に相当する936万人が何らかの障害を抱えているなか、実際に就労しているのは約80万人。障害者が自分らしく働ける場を見つけることは容易ではありません。
農福連携が進むことで障害者雇用の促進となることが期待されています。また、自然と触れ合うことや、作物の育成を通じて精神面のリハビリテーション効果を得られるというメリットもあります。

農福連携が目指すのは共生によるWin-Winの関係

農福連携は、農業と福祉それぞれの課題解決と利益につながるWin-Winの取り組みでなければなりません。たとえば、農業が障害者の就労の場となることで農業生産も拡大でき、農業分野全体の盛り上がりにつながります。
また、障害の特性に応じた分業体制や、丁寧な作業などの特長を活かすことで、良質な農産物の生産やブランド化のように、農産物の付加価値向上も期待できます。
さらに、日本の第一次産業を支える農業へ取り組むことで、社会参加意識を高めることも可能になるでしょう。

企業側でも広がる農福連携

農福連携という言葉が登場したのは2000年代に入ってからです。社会福祉法人やNPO法人、各福祉施設が農業を手伝う取り組みは以前からありましたがあまり拡充することができませんでした。
近年では、農地法の改正によって企業が農地を賃借して農業を行うことが可能になり、それに伴う農業分野での障害者雇用も拡大しています。これも広義の意味で農福連携といえるでしょう。
また、経営のあり方が変化するなかで、社会的責任(CSR)を果たすための取り組みとして障害者雇用を積極的に行う企業も増えています。このように、農福連携を拡大するには、企業側の努力が必要不可欠です。
障害の程度・状況や特性に配慮することで、地域の一員として活躍することが可能です。共生社会の形成のため、障害者を雇用、住まい、生活のなどさまざまな面からサポートしていく環境が求められています。

まとめ

農福連携は、深刻な人手不足に悩む農業と、働く場の確保が難しい障害者とを結びつける施策です。それには、農家や福祉施設だけでなく、企業が積極的な役割を果たすことも必要でしょう。障害者が自分らしく働き、生活できる地域共生社会の実現に向けて、農福連携の拡大に期待が高まっています。




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