外国人技能実習制度に介護職種が追加

2018.03.30

日本の人口は2008年をピークに減少を続けており、社会は超少子高齢化の局面へと突入しています。このことにより、今後の見通しとして「平均寿命が延び社会全体に占める要介護高齢者の増加」ならびに「生活様式や人生設計の変化により、独居老人や夫婦のみの高齢者世帯など、介護する親族のいない高齢者の増加」が予想されます。厚生労働省の調べによると、2025年における介護人材の需要見込みは253万人であるのに対し、供給見込みは215万人です。およそ38万人もの介護人材の不足が予想されています。この圧倒的な不足を補うため、政府は外国人技能実習生の介護現場への受け入れに踏み切りました。

外国人技能実習制度とは

外国人技能実習制度とは1993年から始まった国際協力の取り組みのひとつで、日本で培われた高い技能・技術・知識を発展途上国等に伝え、現地人材の「人づくり」に貢献し、ひいては経済発展に協力するというものです。外国人技能実習生が日本の企業や事業主と雇用関係を結び、実際に現場で働いていく中で技能や技術を身につけていきます。期間は最長5年と定められており、計画に基づいて技能実習が行われます。現在の受入国は、中国・ベトナム・インドネシア・ミャンマーなど15か国です。

外国人技能実習生の受け入れには2種類の方法があります。ひとつは「企業単独型」と言い、日本企業が海外の現地法人や取引先の常勤職員を直接受け入れ、技能実習を行うものです。もうひとつは「団体監理型」と言い、事業協同組合や商工会などの非営利監理団体が一次的に技能実習生を受け入れ、二次的に傘下の中小企業などに就労させ技能実習を行うという形式を取るものです。受け入れ可能な技能実習生の数は、原則として受け入れ先企業の常勤従業員20名あたり技能実習生1名に限られていますが、「団体監理型」ではこの人数規制が緩和されています。

外国人技能実習においては、外国人に対し「技能実習」という在留資格が付与されます。技能実習が進み技能がレベルアップしていくことにともなって在留資格もランクアップする仕組みとなっており、次のランクへと進むためには実習生は所定の技能評価試験に合格する必要があります。

法務省の最新の報告によると、日本国内に在留する外国人の数は平成29年6月末時点で247万人に上り、過去最高の人数をマークしました。これらの在留者のうち、永住者・特別永住者が最も多く107万人(43.4%)、次いで留学生が29万人(11.8%)、外国人技能実習生は25万人(10.2%)でした。在留者数が過去最高であることに比例し、外国人技能実習生も過去最高の人数となっています。技能実習2号移行申請者ベースで見た実習生の出身国は、以前は圧倒的に中国が多かったのですが、近年の新規実習生ではベトナムが数を伸ばしてきており、ベトナム、中国、フィリピン、インドネシア、タイの順になっています。希望職種別に見ると、食品関係製造業18.9%、機械・金属関係製造業18.3%、建設業16.9%、農業12%と、やはり手に職をつけて帰国した後のことを見越して、自国内で十分にニーズがある職種が人気のようです。

介護職種が制度に追加

平成29年11月1日「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」の施行により、それまでは対象外だった介護職種で外国人技能実習制度が活用できるようになりました。この改正では、介護という対人接触を主とする職種に特有の問題点を考慮して、次のような独自の要件が定められました。

・日本語能力
 入国時は日本語能力試験「N3」程度が望ましく、「N4」程度が要件。2年目は「N3」程度が要件。
※N3…日常的な日本語がある程度わかる。N4…基本的な日本語がわかる。
・受入機関の安定性
 設立後3年を経過している機関に限る。
・訪問系サービスは対象外
 適切な在留管理の観点から、訪問系サービスは対象外とする。
・実習指導員の要件
 介護職として5年以上の経験のある介護福祉士等が実習指導員として指導にあたること。

採用するうえでの注意点や今後の見通し

外国人技能実習生の採用においては、実習生5人ごとに1人の指導員(1名以上の介護福祉士などを含む)、1名以上の生活指導員を選任する必要があります。実習生は日本語能力が不十分な状態で着任することが多く、言葉の壁がある中で介護職についての指導を行うことを覚悟しておかなければなりません。そのため、受け入れ現場側の負担も少なからずあるはずです。更に、実習生側にも慣れない介護技能の習得に加えて、日本語の学習も同時進行していかなければならない負担は大きくのしかかります。他の職種では、実習の辛さや待遇への不満を原因として実習生が失踪する、抗議を起こすといった事例が報告されています。受け入れ現場側・実習生側の双方のストレスを軽減し、風通しの良い環境で実習が行えるよう、事業者は最善を尽くすことを求められます。

外国人人材の受け入れは簡単なものではありませんが、今後介護リソースの不足が確実に起こる以上、いずれは全ての事業者が直面する問題です。早いうちから外国人技能実習生の受け入れを行い、外国人人材をどのように活用していくかのノウハウを事業所内で蓄積するのは有意義な取り組みであると言えるでしょう。




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