介護をする側・される側の両者をサポートすることが期待されている介護ロボット。今回は、介護業界で介護ロボットやICT化が求められる理由や、国の方針、具体的な導入事例について紹介いたします。
介護ロボットの役割と定義
ロボットの定義は以下の3つの技術を有した機械システムを指します。
- 感知(センサー系)
- 判断(知能・制御系)
- 動作(駆動系)
介護ロボットとは上記の技術を応用し、介護分野に特化した役割を担うロボットと定義できるでしょう。なお、経済産業省と厚生労働省における「ロボット介護機器の開発重点分野の改訂(平成29年10月)」では、介護ロボットに対する6つの開発分野において支援が実施されており、今後ますます介護現場での支援が想定されています。
・移乗支援
装着型機器を用いての介助者へのパワーアシスト、あるいは非装着型機器を利用し、抱え上げ動作のパワーアシストを実施します。
・移動支援
屋外での被介護者への外出サポート、屋内での移動や立ち座りのサポートを実施。さらに装着型の移動支援機器によ る歩行・転倒サポートも期待されます。
・排泄支援
ロボット技術を用いた排泄物処理、トイレ誘導、そして下着の着脱などにおける一連の動作支援を実施します。
・見守り/コミュニケーション
プラットフォーム機器による、施設あるいは在宅での見守りを実施します。生活支援機器による被介護者とのコミュニケーションも期待されます。
・入浴支援
ロボット技術を用いた、入浴支援を実施します。
・介護業務支援
上記5分野の介護業務に伴う情報を収集し、それを基によりニーズに合う介護を行えるようにします。
どうして介護現場にロボットが必要か
介護ロボットに対する期待の高まりは、日本社会における現状や介護現場における問題などが背景にあります。介護現場にロボットやICT化が求められる理由として、以下の3点が主なものとなっています。
・人材不足
日本の総人口は今後減少に転じていくと予想されている一方で、介護ニーズの高い高齢者の割合も高くなって行くと予想されています。そのような介護の現場における人材不足に対応すべく国は「外国人・中高年人材の活躍推進」「介護現場における更なる処遇改善」などと並んで「介護ロボットの活用」を対策の大きな柱としています。
・介護者の負担が大きい
「職場における腰痛予防対策指針」(厚生労働省)でも福祉・医療分野等における介護・看護作業者には腰痛発生が多いとし、予防対策を示しています。それほどに人の手による移乗・移動支援などは、介護者の身体にも大きな負担がかかります。
そのため介護者の腰痛の発生・腰への負担を軽減し、介護者をアシストするロボットの実用化が期待されています。
・被介護者の自立を促す
ICT(情報通信技術)の活用により被介護者の見守り負担軽減も期待できます。 被介護者の中には、介護者に対する恥ずかしさや申し訳なさを感じているケースも少なくないようです。介護現場におけるロボット技術の普及は、このような介護される側の心理的な負担軽減にもつながることが期待されます。
国の方針
介護ロボットについての政策は、厚生労働省と経済産業省による平成24年度の「ロボット技術の介護利用における重点分野」の策定が出発点となっています。ここに示されるように両省庁が連携し、介護ロボット開発における支援を明確にしています。平成25年度と平成29年度には改訂版が発表され、支援を行う分野を当初の4分野5項目から、5分野8項目へ。最終的に6分野13項目へと大幅に拡大しました。また、平成28年には「ニッポン一億総活躍プラン」が閣議決定されました。ここでは介護人材確保において、介護ロボットの活用を促進すると明記されています。
まとめ