これからの幼稚園施設について

2020.11.02

平成30年3月、幼稚園施設整備指針が文部科学省によって2年ぶりに改訂されました。この指針にはこれからの幼稚園施設に望まれる環境づくりや私的配慮が盛り込まれています。今回は幼稚園施設整備指針改訂の背景や概要、施設整備の事例をご紹介します。

幼稚園施設整備指針改訂の背景

幼稚園施設整備指針の改訂は「社会的背景」「幼稚園施設を取り巻く現況」「幼稚園教育要領の改訂」を主な背景としています。

近年は少子化が社会的な問題として叫ばれています。それに呼応するように、昭和60年度をピークとして幼稚園数は緩やかに減少。在園者数もおおむね減少傾向です。

加えて、幼稚園施設の深刻な老朽化も問題です。国立の施設における老朽施設の割合は68.8%にものぼりました。また、公立・市立については耐震化が完了していない施設があることも問題です。

また、学習指導要領及び幼稚園教育要領が平成29年3月に改訂されたことも大きなきっかけです。この機会に、幼稚園をとりまく社会的状況を整理し、かつ幼稚園施設に起こりうる今後の課題を把握したうえで、必要な施策を検討したというのが、今回の改訂の背景です。

幼稚園施設整備指針改訂の概要

従来の幼稚園施設整備指針で示されていた基本的方針および基本的留意事項については大きな変更はなく、引き続き重要とされています。「環境を通して行う教育」を基本とする幼稚園では、屋内外における幼稚園施設の整備が第一に重要。加えて、地域ぐるみで幼児の学びを支える場として存在することも重要とされています。以下は、幼稚園施設整備指針の基本的方針です。
自然や人・ものとの触れ合いの中で遊びを通した柔軟な指導が展開できる環境の整備

  1. 健康で安全に過ごせる豊かな施設環境の確保
  2. 地域との連携や周辺環境との調和に配慮した施設の整備

上記に踏まえつつ、改訂された幼稚園施設整備指針では幼稚園施設の計画および設計における留意事項として、
以下の7つの視点を充実させることが重要と提示しました。

  1. 幼児自身の興味や関心に応じて様々な活動が展開される屋内環境整備
  2. 自然との触れ合いや体を使った遊びができる屋外・半屋外環境整備
  3. 障害のある幼児など特別な配慮を必要とする幼児に対応した施設整備
  4. 教職員の活動を支えるための施設整備
  5. 家庭や地域等との連携・協働を促す施設整備
  6. 安全を確保しつつ自発的な遊びを誘発する施設整備
  7. 教育活動の変化に対応できる施設整備

なお、1〜3は「幼児教育の場にふさわしい豊かな環境づくり」、4〜5は「幼児教育の担い手を支え、家庭や地域と連携・協働を促す環境づくり」、6〜7は「その他の施設的配慮」としてまとめられています。

改訂に沿った施設整備の事例集

次に、改訂された幼稚園施設整備指針に沿った施設整備の事例についてご紹介していきます。
前項の「計画および設計における留意事項」のなかから【A】障害のある幼児など特別な配慮を必要とする幼児に対応した施設整備、【B】)教職員の活動を支えるための施設整備、【C】家庭や地域等との連携・協働を促す施設整備をピックアップしました。

A】障害のある幼児のための“落ち着ける”小規模スペースとバリアフリーの設置

東京都杉並区の高千穂幼稚園では、特別支援教育の推進に向けた配慮として、障害のある幼児にもやさしい環境の提供を目指しています。特徴的なのは「デン」と呼ばれる小規模なスペース。ここは、幼児たちの隠れ家としても機能しますが、パニックになった幼児を落ち着かせる空間としても活用されます。

そのほか、園舎の段差をなくしたバリアフリー設計やベビーチェアが設置された多目的便所も設置し、高齢者やベビーカー利用者への配慮も行っています。

【B】教職員の活動を支えるための施設整備

主に職員室や、教職員用のスペース確保に関する観点です。いくつかの事例をご紹介します

  • 壁をホワイトボードにし、教職員の研修・打ち合わせの際に活用(はま幼稚園・兵庫県尼崎市)
  • 事務スペースとミーティングルームを園内に設置し、有機的に活用(認定こども園 Kids まゆみ・大阪府和泉市)
  • 広々として職員室のカラス扉を設置し、保護者が立ち寄りやすい環境を整備(恵庭幼稚園・北海道恵庭市)
  • アットホームなキッチンスペースを設置し、教職員の情報交換・休憩の場として活用(認定こども園さざなみの森・広島県東広島市)

【C】家庭や地域等との連携・協働を促す施設整備

千葉県四街道市の四街道さつき幼稚園では、園舎北側に「たけのこホール」という屋外施設を設置。ここにあるステージは、地域の方を招いた発表会の場になり、地域交流の場としての役割もあります。また、保護者が手入れや整備を率先して行っているのも特徴です。

東京都立川市の「ふじようちえん」では、保護者同士や教職員が子育て相談・子育てサークル活動を行える空間を設置。内装をおしゃれにし、保護者が立ち寄りやすい環境に仕上げています。

福島県西白河郡中島村の中島村立中島幼稚園は、預かり保育の環境整備を行っています。畳の午睡室やカーペット敷きの空間など、家庭的な雰囲気づくりを行っています。

まとめ

幼稚園施設整備指針の改訂は、現代の幼稚園教育や社会的背景に伴い、必要となる環境整備の内容をまとめたものです。従来の指針を踏襲しつつ、新たに設けられた留意事項を意識した施設計画が、幼稚園には求められています。




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