働く環境に「緑」と「データ」の力を―オフィス緑化 × 生体情報可視化がつくる新しい価値

2026.03.13

企業の働き方が大きく変化する中、「働きやすさ」や「ウェルビーイング」を高めるオフィスづくりの重要性が高まっています。特に近年は、自然(グリーン)を取り入れたバイオフィリックデザインが注目され、植物が働く人のストレス軽減や集中力向上に寄与することが多く語られています。
しかし一方で、「緑化が働く人にどれほど効果があるのか?」「配置や量によって、どのような違いが生まれるのか?」といった点は、感覚的に語られることが多く、科学的・客観的に検証される機会は多くありませんでした。
大和リース環境緑化事業部では、こうした課題に応えるために、生体情報を計測して働く人の状態を可視化するツール「GISTA(ジスタ)」を活用し、社内でオフィスレイアウト変更効果の可視化に向けた計測を実施しました。さらに、東京都の「Be Smart Tokyo」※1のうち、CIC Institute※2が実装促進事業者のプログラムを活用し、働く環境×緑×データの新しい取り組みとして検証を行っています。
(GISTA※3は竹中工務店が開発し、ジオクリエイツ※4と共同展開を進めるオフィス空間評価システムです。)
本記事では、その結果から見えてきた傾向と、意思決定者が押さえるべき導入判断のポイントをご紹介します。

なぜ今、“データで可視化するオフィス緑化”が必要なのか

働く人の声やデータを取り入れた、確かなオフィスづくりへ

これまで「観葉植物を置くとリラックスできる」といった効果は広く知られていましたが、効果の程度や、配置による差、働く人の立場や業務内容による違いなどは可視化されていませんでした。
そのため、

  • 組織内の意思決定に必要な根拠が示しづらい
  • 緑化投資に対する効果説明が定性的
  • 社員の体感値に依存し、最適解が出にくい

といった課題がありました。
そこで必要となるのが、データにもとづくオフィス緑化の設計です。
ウェルビーイングの重要性と企業の課題「心地よく働ける環境づくり」は、採用・定着・生産性の観点から、企業にとって重要なテーマです。特にZ世代の働く価値観として、“働く場所への納得感”が強く、自然を感じられる空間は高い評価を得やすい傾向があります。

バイオフィリックデザインが注目される理由

バイオフィリックデザインは、「人は自然とつながることで本来の力を発揮できる」という考えに基づく設計思想です。
オフィスでもその効果が期待されていますが、定量的な評価は限定的でした。そこで今回、私たちは科学的アプローチを導入しました。

働く人の状態の変化を可視化するツール

GISTA(ジスタ)とは?

GISTAは、竹中工務店が開発し、ジオクリエイツと共同展開を進めるオフィス空間評価システムです。
身に着けたリストバンド心拍計により次のような指標をリアルタイムで計測できます。

  • ストレス度
  • 緊張レベル
  • 注意・集中状態
  • 安心・リラックス度
  • 感情の変化傾向

これらのデータは、働く環境と人の心身状態がどのように結びつくかを明らかにします。

データ写真

緑化と相性が良い理由

植物は視覚・光・距離などさまざまな刺激を通じて心理反応を起こします。
GISTAは、その小さな反応をとらえることで、「緑の増減」や「配置の違い」が働く人に与える影響を数値で把握できる点が大きな特徴です。

東京都「Be Smart Tokyo」プログラムでオフィスレイアウトの変更に伴う影響の可視化のため、生体情報の計測を実施

今回の取り組みは、東京都のスマートワーク推進プログラム「Be Smart Tokyo」を活用して実施しました。

◆実施概要

  • 対象者:大和リース従業員 30名
  • 実施期間:レイアウト変更前後2週間ずつ
  • 計測内容:生体情報(ストレス・集中度・安心度など)
  • 目的:オフィスのレイアウト変更や緑の量・配置が、働く人の状態にどのような影響を与えるかを可視化すること

◆計測方法

  • 緑化前のレイアウトと緑化後のレイアウトで計測
  • 緑量・視界への入り方・距離などを変更し比較
  • 座席配置や動線、業務中の状態を定点計測

◆検証したポイント

  • 植物との距離
  • 視界に入る緑の量
  • 異なる配置パターンの比較
  • 集中エリア・リラックスエリアそれぞれの効果

計測から見えたこと

●計測から分かったことの模式図

1 植物が視界に入る数が増えると「安心度」が上昇

  緑が見える位置で作業する人ほど、安心感が高まる傾向が確認されました。

2 緑との距離が近いほどストレス値が低下

  近くに植物がある座席では、ストレス反応が相対的に低い傾向がみられました。

3 配置を最適化すると集中度が向上

  特に視界の“端”に植物が入るレイアウトでは集中状態が持続しやすい傾向も確認されました。

4 「量」よりも「質(配置)」が重要

  植物をただ増やすより“どこに、どんな種類を、どう配置するか”によって効果が大きく変わることが明確になりました。

●執務室のレイアウトに、緑の位置・リラックスと集中の計測結果の着色、を重ねた図

●計測した全30席について、遠くの緑・近くの緑に分類した平均値の一例

※詳細な数値は非公開のため、傾向ベースで記述しています。

データを活用したオフィス緑化の新しい提案へ

今回の測定で得た知見は、自社の効果測定だけでなく、今後の大和リースの提案に広く活かされます。

働き方・人の動線に合わせた「最適な緑化レイアウト」提案

データから、業務内容や空間の用途によって最適な配置が異なることがわかりました。

生体データに基づく“緑化効果の見える化”で社内説明をしやすく

生体情報を使うことで、経営層や総務部門への説明材料として活用できます。
「感覚ではなく、数値で示せる緑化」は大きな説得力を持ちます。

持続的なウェルビーイング施策として発展

オフィス緑化は単なる装飾ではなく、働く人の状態を改善する“投資”として捉えることができるようになります。

今後は、今回使用した生体情報測定技術(GISTA)をはじめとしたデータを活用することで「緑×データ」による価値あるオフィスづくりを進めていきます。

まとめ:緑とデータがつくる、働く人にやさしいオフィスへ

今回の取り組みを通じて緑化は確かに人の心理的状態に影響を与えられることがデータで確認できました。
大和リース環境緑化事業部は、これからも

  • 緑の力(自然)
  • 生体情報の力(データ)

この2つを掛け合わせ、働く人がより健やかに、安心して力を発揮できるオフィス空間を提案していきます。

※1. 東京都スマートサービス実装促進プロジェクト「Be Smart Tokyo」 
東京都では、先端技術等を活用した便利で快適な都市「スマート東京」が実現されることを目指しています。
本プロジェクトは、独創性・機動力にあふれるスタートアップ等が各エリアと協働することで、都民の暮らしの利便性・QOLを高める新しいサービスをスピーディに生み出すことを目的としています。
東京都プロジェクトページ:https://www.be-smarttokyo.metro.tokyo.lg.jp
※2. CIC Institute とは、イノベーションエコシステム構築やスタートアップ、特にディープテック関連スタートアップの支援における知見を活かし、政府や地方自治体、大学などと連携しグローバルに成功を収めることのできるスタートアップの成長支援や、エコシステム構築業務を担うチームです。
CIC Institute は現在、多くの行政機関や大学関係のプロジェクトを遂行しており、エコシステムの発展やイノベーションを通じた経済発展に貢献をしています。
今後も、自治体等の行政機関や民間企業からの高まる需要に合わせ、より多くのプロジェクトを 実行し、CIC Tokyo を含む CIC 全体と緊密に連携しイノベーション創出を促進する部門として活動していきます。
CIC Institute プロジェクトページ:https://jp.cic.com/besmarttokyo/
※3 GISTAは、建物利用者の位置情報と生体情報(主に心拍データ)を同時に測定して分析・可視化することで、オフィス空間の評価と利用者個人へのレコメンデーションを行い、個人と組織双方の生産性向上に役立てるシステムです。測定された心拍データから集中度・ストレス度などを算出し、位置情報と紐づけることで、個人の働き方のデータと、組織のオフィス全体のデータを可視化・分析することが可能です。
サービスサイト:https://geocreates.net/gista-lp/
※4. ジオクリエイツとは、「すべての人に最高の空間体験を!」をビジョンに掲げ、空間体験価値を定量化する空間アナリティクスツール「ToPolog(トポログ)」を展開しています。国内外の様々なインテリアや建築や都市のプロジェクトでの関与実績から、設計者・事業主・エンドユーザー間の課題を捉え、設計段階や設計前後の現地のVRでの視線や脳波を実測・推定でデータベース化・AI化して、不動産・防災・小売などの事業領域で空間デザインの民主化を実現します。
コーポレートサイト:https://geocreates.net/

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