自然と共生するまちづくり、グリーンインフラの可能性

2023.10.02

(写真はイメージです)

 

さまざまな課題解決に自然の多様な機能を活用する「グリーンインフラ」が、持続可能な都市や社会を考える上で効果的と注目を集めています。
本記事では、気候変動の影響緩和し、生物多様性の保全、さらには地域社会の活性化にも貢献する、このグリーンインフラの可能性を掘り下げます。

グリーンインフラとは?

グリーンインフラストラクチャー(green Infrastructure)の略称で、現在、持続可能なインフラ整備の一環として欧州や米国を中心に積極的に取り入れられている取り組みです。
グリーンインフラの定義は国によってさまざまであり、国際的にはまだ統一されていません。
日本における考え方は、国土交通省が以下のようにまとめています。

 

「グリーンインフラとは、社会資本整備や土地利用等のハード・ソフト両面において、自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくりを進める取り組みである」
(引用:国土交通省 グリーンインフラ推進戦略)

 

すなわち、自然環境が有する多面的な効果を、私たちの暮らしや社会に取り入れ、自然の保全を進めながら、さまざまな社会問題の解決に活用する取り組みを指すのが「グリーンインフラ」です。

現代社会を取り巻く課題と、グリーンインフラによる解決策

 

地球温暖化による気温上昇、異常気象や災害の増加、ヒートアイランド現象による健康被害、インフラの老朽化など……
社会は今、さまざまな社会的課題に直面しています。
それらの課題に対し、グリーンインフラでは下記のような自然の多様な機能を利用します。

 

 

●良好な景観形成
●生物の生息・生育の場の提供
●浸水対策(浸透等
●健康、レクレーション等文化提供
●延焼防止
●外力減衰、緩衝
●地球温暖化緩和
●ヒートアイランドの対策 等

引用元:国土交通省ホームページ
(URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_fr_000143.html

次項では、これら自然の恩恵によってもたらされる効果と取り組みを、具体な取り組みと共に解説します。
 

グリーンインフラの効果と具体的取り組み

公園

自然環境には「防災・減災」「地域活性化・地域の魅力向上」「環境」といった3つの機能が備わっています。
本項では、それらを活用したグリーンインフラの具体的な取り組みを、4項目に分けて解説します。

  • まちの緑を「ふやす」
  • 人が集う空間づくりによって「にぎわう」
  • 自然災害の脅威へ「そなえる」
  • 豊かな自然の質を「まもる」

 

 

まちの緑を「ふやす」

都市緑化、すなわちアスファルトやコンクリート等の人工被覆が多い都市部に緑を「ふやす」ことは、まちの環境改善や暑熱対策につながります。
具体的な取り組みとして、屋上や壁面、駐車場などの緑化が挙げられます。これらの緑化は表面温度を下げ、気温上昇を抑えられるため、ヒートアイランド現象の緩和が見込まれます。
また、緑化を施した建造物は、美しさと豊かさを兼ね備えた都市のランドマークとなり、資産価値を向上させる役割も果たします。次項の「地域復興」にもつながる効果であり、都市の再生・創生が期待できます。

 

ひと中心の公園づくりによって「にぎわう」

地域活性化のカギとなる「にぎわい」も、自然の力で創出できます。
公園や緑地を整備し、地域に交流の場が生まれることで、コミュニティ形成の一助となります。また、緑化を進める中で、植栽の維持管理など、地域住民への雇用機会が生まれ、地域経済の活性化も見込めます。このように、グリーンインフラは各地域において、経済・社会・環境面で多くの利益をもたらします。
現在は、都市部の公園再生や質の向上のため、全国各地でPark-PFIや指定管理者制度など、公民連携の手法を活用しています。他施設においても、屋内環境を快適にするための屋内緑化・リノベーション、オフィス空間等に対するバイオフィリック・デザインの反映など、さまざまな取り組みが進んでいます。
また、公益財団法人都市緑化機構では、緑の取り組みを評価する認定制度「SEGES(社会・環境貢献緑地評価システム)」を発足。企業緑地の価値の「見える化」が進んでいます。

 

 

自然災害の脅威へ「そなえる」

豪雨、猛暑、干ばつなど、地球温暖化が引き起こすさまざまな自然災害に我々は直面しています。これらの脅威に「そなえる」ための手段としても、グリーンインフラが活用できます。
たとえば、河川やため池の氾濫を監視するシステム(水位計・IoTカメラなど)は、洪水などの災害を予測するために使用されます。豪雨の被害においては、レインガーデンや保水・透水性の高いインターロッキングを採用することで、一時的に雨水を貯めることができるため、時間をかけて地中へ浸透させ、下水設備の負担を軽減することができます。
また、放置された森林に人の手を加え、適した植林・伐採を行うことで、健全な状態の森林が強く根を張り、土砂の崩壊を防いでくれます。このように、台風や大雨被害による土砂災害にも、緑の力で対処できるのです。
また、災害が発生してしまった際の備えとしては、津波や水害の避難にも活用できる自走式立体駐車場や、防災備蓄倉庫の設置が挙げられます。

 

 

豊かな自然の質を「まもる」

豊かな自然を次の世代へ引き継ぐためにも、生物の多様性を「まもる」必要があります。
生態系は複雑なバランスで成り立っているため、計画なく緑を増やしてしまうと、在来種の生態が危機にさらされる可能性があります。そのため、入念な計画を立てたうえで緑化を進めることが肝要です。
具体例として、生物の生息空間を守るためのビオトープづくりが挙げられます。さらに、次世代が環境保全について関心を持つきっかけとなるよう、学校での環境教育も行われています。また、豊かな自然を未来につなげるべく、公的機関や企業のみならず、市民団体やボランティアグループも積極的に活動しています。

 

グリーンインフラとその可能性

自然の力を用いて、持続可能で魅力的な国土や地域づくりを推進するグリーンインフラは、SDGsへの貢献にも繋がります。グリーンインフラの概念が深く理解され、広く浸透することで、日本が抱える社会的課題の解決にも寄与するでしょう。
人と自然がよりよい関係を築き、共生できる健やかな未来のために、今後も更なる推進が期待されます。

 




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