そのような背景から介護施設事業への参入を検討している方もいらっしゃるでしょう。
今回は介護施設の運営状況や、実際の運営において把握するべきこと等、抑えておきたいポイントについて解説します。
■介護施設の現状
■介護施設経営で重要なポイント
・職員間のコミュニケーション・連携
・職員の待遇改善
・勤務形態の多様化
・職員の教育・研修を充実させる
■介護施設経営時の注意点
・効率的な運営が必要
・介護報酬は国の方針により改定が行われる
■まとめ
■介護施設の現状
高齢者数の増加が進む日本社会において介護施設の需要は増加しています。
その一方で倒産する介護施設も年々増えているのが現状です。
介護施設への入居希望者は常に待機者が居る状態です。待機者が多い背景の一因として介護職員の人員不足が挙げられます。人員配置基準を満たせない等、勤務する介護職員不足が要因で、居室やベッドに空きが有っても受け入れができない施設が多く存在します。
政府は介護職員の慢性的な不足状態を重く考え、2012年に運用を開始した処遇改善加算を強化する形で、2019年10月に介護職員の賃金アップを目指し、特定手処遇改善加算制度をスタートしました。条件を満たした事業所が届け出を提出した場合、介護職員に1人あたり月1万2000円~3万7000円まで給与の引き上げが可能です。
介護職員の慢性的な人手不足は、介護施設の課題に直結する問題です。
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■介護施設経営で重要なポイント
介護施設の経営で重要となるポイントをみていきましょう。
・職員間のコミュニケーション・連携
前述の通り介護業界は人員が不足しています。その中で介護離職も大きな課題と言えます。令和1年度の介護労働実態調査(2020年2月調査結果)のアンケートにおいて、介護関係の離職理由で多く挙げられている内の1つが人間関係です。その割合は男性が25%、女性が22.6%に上り、2割強の方が人間関係に悩みを抱え退職したことが解ります。
介護離職を防ぐためには、まず職員間でコミュニケーションを取り易く、働きやすい職場作りを行うことが重要と言えます。介護職員同士は勿論のこと、看護師とのコミュニケーション向上は業務上の円滑な連携を図るためにも重要です。又、正社員とパート職においての待遇格差は人間関係の悪化を招くおそれが有ります。
経営者や施設長は、まず職員との個人面談を行い信頼関係を築いていくことが介護離職を防ぐ第一歩になります。
・職員の待遇改善
職員間のコミュニケーションや連携以外で離職率が改善されない課題として、介護労働実態調査のアンケートから以下の原因が挙げられます。
・仕事内容の割には賃金が低い
・身体的負担が大きい
・有給休暇が取りにくい
・精神的にきつい
職員への待遇改善はこれからの大きな課題と言えます。
心身共に過酷な労働現場において、他業種に見劣りをしない賃金体系を目指す必要があります。
資格やスキルに応じて役割を与えたり、手当てを支給する事も重要です。勤続年数やスキルに応じた待遇制度を導入するなどして、職員のモチベーション向上を図りましょう。
・勤務形態の多様化
勤務形態の多様化を実施することや適切な人員配置を行うことは、職員1人1人の負担軽減につながります。過去には人員不足のために、やむを得ず連続して出勤している人もいました。このような負担を無くすために勤務形態の見直しが必要です。
例えば、夜間専門シフトを導入すれば日勤と夜勤の掛け持ちが必要なくなるため、体力的な負担が大きく軽減します。日勤専門スタッフと夜勤専門スタッフを導入し、場合によっては夕方から夜中までの中番スタッフを制度として取り入れるなどで、勤務形態の多様化に対応可能です。
適切な人員配置を行う為には、施設の立地条件も重要な要素です。公共交通機関で無理なく通勤出来る立地であれば、職員雇用をしやすくなります。
・職員の教育・研修を充実させる
介護労働実態調査のアンケートにて、事業を運営する上での問題点として、良質な人材の確保が難しいが56.7%を占めました。生産年齢人口が減少の一途を辿るなか、外部から良質な人材を確保しづらいとなると、職員のスキルアップが必要不可欠となります。そのためにも、教育と研修を充実させることが重要です。
・新人職員向けに基礎的な教育・研修
・中堅職員向けにリーダーシップ研修
・管理職向けに経営や労務管理の教育
・全職員向けにスキル向上を目的とした教育 等
教育の際にはそれぞれのキャリアによって研修内容を変えていくことが重要となります。
■介護施設経営時の注意点
介護施設運営時の注意点をみていきましょう。
・効率的な運営が必要
介護施設の運営に際しては、介護サービスごとに配置基準が違い、賃金も地域毎で異なります。地域に愛され、市場で勝ち残っていくためには、良質な介護サービスを提供していく事が重要です。
その中で、人件費は売上高に対する大半を占めています。良質な介護サービスを提供しながら、利益を出していくためには、効率的な人件費バランスを検討することが重要です。
・介護報酬は国の方針により改定が行われる
介護報酬は地域やサービスによって異なる基準で計算され、国の方針によって3年ごとに改定が行われます。介護保険料を原資とする介護報酬は、介護サービスを行うことで利用者と市町村から支払われる公的報酬です。
現在は第7期介護保険計画の最終年度となり、2021年度から第8期介護保険計画が始まります。生産年齢人口が減少し被保険者が減少し続ける一方、保険者が増え続ける介護保険は、国の財政を大きく圧迫しています。その中でも、社会ニーズの高い介護サービスに対しては、介護報酬が多く支払われます。介護サービスでは無いですが、職員の処遇改善加算についても介護保険内で扱われます。
介護施設を安定的に運営していくためには、介護保険の改正に対してアンテナを張り上手く活用していくことが最も重要な事と言えます。
■まとめ
介護施設は、爆発的に高齢化が進む日本にとって重要であることは言うまでもありません。だからと言って戦略もなく事業運営を行えば、倒産というリスクが高い事業です。今回触れさせて頂いた内容を下記にまとめてみました。
・介護職員のメンタル管理
・介護職員の待遇改善
・ポイントを押えた人員配置
・介護職員の教育
・介護保険制度の理解・報酬内容の把握
ポイントを押さえて事業計画を立て、戦略的に運営をしていくことが必要です。以前から事業運営をしている方は、ポイントを押さえ、状況に応じて柔軟に計画を見直しながら運営を続けています。市場で勝ち残っていくためには、最低限必要な内容として理解をしておく必要があります。